暑い夏が過ぎ、秋も越えてようやく冬らしくなってきたかと思えば、日中は半袖で過ごせる日もあるぐらい暖かい、不思議な季節になりました。
皆様、いかがお過ごしでしょうか?
さて、今回は“食べる”ということについてお話させていただきます。
昨今タイパ(タイムパフォーマンス)が注目されており、時間の効率化に対する意識が高まってきています。
映画や動画を倍速で見たり、複数の物事を同時に済ませられたりする方法や商品が、人気となっています。
そんな中、食に関しても、一部で“タイパ”が求められている傾向があります。
ある特定の栄養素に関して比率を多く占める、あるいは、1つの食品だけで全栄養素を完結できるものであったり、かつ、このようなものを、何かをしながら食べられるようなものであったり…
また、噛むことすら省くような、ドリンクタイプの食品まで登場しています。
確かに、忙しい世の中で、昔と同じだけ働いても、同じようには収入を得られなくなってきました。未来を案じて、ひたすら働く方も多くいます。一分、一秒でも無駄にしたくない。
日本はどんどん長時間労働に追い込まれています。
しかしながら、だからこそ、食においては、時間効率を意識せず、ゆったりとした気持ちで、食と時間と向き合ってほしいのです。
食べることは、体をつくること、それだけではありません。
食べものや、食べるということは、心の栄養にもなります。
時間がなく、自分では簡単に済まそうと思っていても、心はそれに満足していません。
そんな生活をしていれば、次第に心が荒んでいきます。気持ちに余裕がなくなっていきます。
最近読んだ記事で、「食に飢えると他人を思いやれなくなる」
そんな言葉を目にしました。本当にそうだと思います。
想像してみてください。今、世界のある地域では、戦争が行われています。今の日本のように、小腹が空いたからといって、食べられるようなお菓子はありません。病院や学校、もちろん家も、次々と破壊されています。全ての社会機能が止まり、支援物資も不足する中、どうにか生きようと、人は食べものを欲します。
果たして自分が同じ状況下だったら、他の人に食べものを譲ることができるでしょうか。もしかすると家族や友人にでさえ、その心の余裕を持てないかもしれません。意図せずとも、食べものをめぐって、また争いが起きることも考えられます。
このように、本来、生きる上で、食べることとは、それだけ大きな役割を占めています。
ここが整ってこそ、その他も回っていくのです。
◎目の前の食べものはただの食べものなのか
いくらあなたが、時間の効率化を求め、手軽に済ませようと手にする食材も、あなたを思わずに作られたものは、何一つ存在しません。それは、どこかの誰かが、顔の見えないあなたを思いやって、命を吹き込んだ、大切な大切な、魂そのものなのです。
それは、生産者・開発者・加工者・運送業者・調理従事者・販売者など、何人もがバトンを繋いで、やっとあなたの元に届けられているのです。
それを忘れずに、一口一口、かみ締めて、食べていただけたら嬉しいです。
あなたの元に、食べものを運んでくれた、たくさんの方々の愛を、心で感じながら、味わってほしいなと思います。